2007年 05月 01日
昨年の2月にIntel CPUを積んだMacintoshが登場しましたが、各アプリケーションやプラグインがUniversal Binary化されないとIntel Macへ移行できないという状況の中、昨年の夏にはMac Proが登場し、PowerPC搭載のMacは新規で購入できないという状態に陥りました。 PowerPC搭載のG5などの中古品は、未だにかなりの高値で取引されております。 昨年の11月23日にこのブログで一度、Universal Binary対応プラグインを列挙しておりますが、あれから5ヶ月が経ち、状況は格段に進歩いたしました。 プラグイン業界の核となるメーカーの一つと言っても過言でないNative Instrumentsに関しましては、先日Elektrik Pianoのバージョン1.5が登場したことでUB化はほぼ完了いたしました。 IK MultimediaもSonik Synth 2を残して全て完了。 もっと対応が遅れると思われていたSteinbergも、Groove Agent 2とVirtual Bassist以外は完了しています。 私にとって重要なプラグインである、Yellow ToolsのMajesticとCultureは、Independence Playerという新たなフォーマットにてUB化を完了(しかもアップデートは無料!)。 先行してUBのベータ版を配布していたToontrackのDFHSも、3月の半ばに正式対応。 結構マイナーな部類に入ると思われる、AASのTassman 4も先日UB化されました。 最も普及しているプラグインの一つである、SpectrasonicsのAtmosphereとTrilogyの対応がまだですが、正直な所ここまで待たされると、もう使わない方向で考え出してしまいます。 ちょうど数年前のOS9からOS Xへの移行の際と極めてよく似た状況です。 ここで、Intel Macへの対応を表明しているものの、未だにUB化されていない代表的な物を列挙してみましょう。 Arturia ARP2600V GForce minimonsta IK Multimedia Sonik Synth 2 MOTU MarchFive Spectrasonics Atmosphere Spectrasonics Trilogy Steinberg Groove Agent 2 Steinberg Virtual Bassist TC PowerCore 全般(現在動作制限のあるベータ版を配布中) Spectrasonicsの2製品の対応がここまで遅れているのがとても痛い所ですが、GForceやIK Multimedia、Steinbergは、もう時間の問題のようです。 本当に後ちょっとですね。 またメーカーの都合からか、廃盤になることが発表された物、もしくはUB化されるかどうか分からないプラグインも存在します。 私が所有している物の中だけでも、いくつかあります。 Best Service Artist Complete East West PMI Bosendorfer 290 East West QLSO Platinum Native Instruments Intakt Native Instruments Kompakt こうして見てみると、Spectrasonics然り、Best ServiceやEast West然り、自社でプラグインのエンジンを開発していなかったメーカーが、エンジンの開発元の都合のあおりを受けたという状況と言えそうです。 中でもNIのKompakt、Intaktエンジンを積んだプラグインはかなりの数が出ていたため、この顛末は、ユーザーに取っては本当に「冗談じゃない!」といったところですね。 East Westは新たなエンジンを積んだプラグイン、PLAYを発表しましたが、これまでNIエンジンで出ていた物が全て移植されるのか、また移植されたとしてもその新しいエンジンへのバージョンアップが可能なのか、かなり曖昧な状態です。 その他、UB化をするのに有償バージョンアップを余儀なくされる物も多数存在いたしました。 私は今回のUB化のためだけに、数万円は出費していると思います。 またUB化されたものの、プラグインのファイル名が変わってしまった物(IK Multimedia T-Racks Pluginなど)、エンジンそのものが変わってしまった物(UltimateSoundBank PlugsoundやYellow Tools Candy/Culture/Majesticなど)もあり、ここら辺はPowerPC時代のソングファイルとの互換性に問題が生じます。 と、かなりマイナス面も書いてまいりましたが、私は総じて言えば、MacintoshがIntel CPUを採用したことは、基本的に歓迎しております。 これまで何かと、ソフトウェア・インストゥルメンツはWindows機のパワーの方が勝ると言われてきましたが、例えばNIのReaktorやSteinbergのHalionのUB版を触っていると、Windows版の方が動作が軽かったプラグインでも、何ら遜色無くMacで扱えるようになっていると思えるからです。 ここら辺のパフォーマンスの比較は、また別の機会に行いたいと思います。 今私が所有しているIntel Mac機はモバイル用のMacBook Proだけなのですが、後は、いつデスクトップ機であるMac Proを導入し、Intel Macへ完全移行するかを見極めるのみです。 基本的にはMac OS X 10.5の発売後と思っております。 これはもう今年の秋であることは間違いないことなので、Logicの次期バージョンと合わせて、今からとても楽しみなところです。 #
by uksound
| 2007-05-01 01:04
| プラグイン
2007年 03月 19日
既にあちこちのコミュニティなどで話題になっているようですが、OS 10.4.9にアップすると不具合の出るソフトがあるようです。 私は何しろ情報収集のために、この手のアップデートは進んで入れてしまいます。 で、その結果報告です。 「Power Mac G5 2.7GHz DualでのLogic Pro 7.2.3のAU互換について」 どうもAUのチェック方式に手が加わったようで、OS 10.4.9にアップした後にLogicを起動すると、AUの互換チェックをゼロから始めてしまいます。 でおまけに、OS 10.4.8では互換だったいくつかのプラグインが非互換になってしまいました。 我が家では以下のプラグインが非互換です。 ・GForce Minimonsta fx(Minimonsta本体は互換) ・Scarbee D-6C Filter ・Steinberg Virtual Guitarist 2 FX(Virtual Guitarist 2本体は互換) ・TC PowerCore Declick ・TC PowerCore Decrackle ・Waves Guitar Amp(Waves GTR 2) ・Waves Stomp 2/4/6(Waves GTR 2) PowercoreとWavesに関しては、上記とは別のプラグインが非互換になる方もいらっしゃるようです。 我が家のプラグイン事情が分からないと、結局何が互換になるのか分からないので、我が家の互換プラグインも載せましょう。 ・Antares Auto-Tune 5 ・AAS Tassman 4 ・Arturia ARP2600V/CS-80V/minimoog V/Moog Modular V2 ・Audioease Altiverb 6 ・Best Service Artist Drums/Artist Grooves ・Cakewalk D-Pro ・Celemony Melodyne plugin/Melodyne Bridge ・East West Bosendorfer 290/QWLSO Platinum ・FXpansion BFD/Orca ・GForce ImpOscar/Minimonsta(FXは非互換)/M-Tron/Oddity ・IK Multimedia AmpegSVX/Amplitube/Amplitube 2/CSR/Philharmonik/Sampletank 2/Sonik Synth 2/T-RackS Plugin ・iZotope Ozone 3 ・Korg LegacyCell/M1/MDE-X/MonoPoly/MS-20/Plysix/Wavestation ・M-Audio Key Rig ・MOTU Ethno/MSI ・MusicLab RealGuitar 2 ・NI Absynth 3/Akoustik Piano/B4(44.1kHzのみサポート)/B4 II/Bandstand/Battery/Battery 2/Battery 3/Elektrik Piano/FM7/FM8/Guitar Rig/Guitar Rig 2/Intakt/Kompakt/Kontakt 2/Kontakt Player2/Kore/Pro-53/Reaktor 5/Spektral Delay/Vokator ・Novation Bass Station/V-Station ・Scarbee VKFX ・Sonalksis FreeG/SV315/SV315Mk2/SV517/SV517Mk2/SV719 ・Sony Oxford EQ/Dynamics ・SoundToys Crystallizer/EchoBoy/FilterFreak/PhaseMistress/Tremolator ・Spectrasonics Atmosphere/Stylus RMX/Trilogy ・Steinberg Groove Agent 2/Halion Player/Virtual Guitarist 2(Virtual Guitarist 2 FXは非互換) ・Synthogy Ivory ・TC Powercore Declick/Decrackle以外の全てのプラグインが互換 ・Toontrack DFH Superior/EzDrummer ・UAD-1 全てのプラグインが互換 ・VirSyn Tera3 ・VSL Vienna Instruments ・WaveMachineLabs Drumagog ・Waves Diamond Bundle/IR-1(L)/Q-Clone ・XLN Audio Addictive Drums ・Yellow Tools Culture/Majestic こんな感じです。 ちなみに全てのプラグインに対して最新のアップデーターをかけております。 また、あくまで我が家のG5でのお話であることをご了承ください。 「MacBook Pro 2.33GHz Core2Duo Logic Pro 7.2.3のAU互換について」 上記の非互換と互換リストに列挙したプラグインのうち、Universal Binaryに対応しているものは全て互換になりました。 G5では非互換だったWaves GTR 2も互換でした。 「IntelMac OS 10.4.9上でのPro Tools LEについて」 IntelMacでソフトウェアアップデートを使ってOS 10.4.9にアップすると、何と!Pro Tools LEが起動しなくなります。 ネットの書き込みを見ていると、同様の症状の方が複数いらっしゃいましたので、これはかなり確実なお話だと思います。 もしも10.4.9にアップさせてしまったら、あわててOSの再インストールを考えるのではなく、Mac OS X 10.4.9 Combo Update (Intel) を当ててみてください。 http://www.apple.com/support/downloads/macosx1049comboupdateintel.html 我が家はこれで起動するようになりました。 ただ、デジデザインからはOS 10.4.9の推奨がまだ出ておりませんので、基本的には推奨が出てからアップするのがいいと思います。 このサイト、どれくらいの人が見てるのかな? 少しでも皆様のご参考になれば幸いです。 #
by uksound
| 2007-03-19 18:26
| ソフトウェア検証
2007年 02月 14日
2ヶ月も更新を怠ってしまいました。 機材検証ブログなどと仰々しいタイトルを付けたが故に、どうもきちんと検証した内容を書こうと肩に力が入ってしまいます。 今後はもうちょっと気軽に、日頃ソフトを触る中でのちょっとした感想も載せていこうと思っておりますので、懲りずに今後も長い目で見てやってください。 前回までUniversal Binaryについていくつか書きましたが、未だに私のメイン・コンピューターはPower Mac G5 2.7GHz Dualです。 持ち出し用としてMacBook Proも入手しましたが、「Mac Proがどうしても欲しい!」とまでは至っていません。 所有しているプラグインでまだIntel Macに対応していない物が多数あるということもありますが、CPUパワー的にはG5でも正直ぜんぜん不満がないのです。 昨年の半ばぐらいまでは、それこそ新しいソフト・シンセが出る度に飛びついていたことが多々ありましたが、いいかげん今所有している物でも、かなりお腹いっぱいの状態になってまいりました。 そろそろどんなソフト・シンセが出てきても驚かなくなりましたし、発売と同時に買いたくなるということも少なくなってまいりました。 最近はソフト・シンセよりもプラグイン・エフェクトに目がいくことの方が多いです。 というのも、ソフト・シンセが大容量化し、よりリアルになってきたおかげで、きちんとエフェクト処理を施さないと、うまく混ざってくれないようなことが増えてきたからです。 今回はそんな私の、最近のお気に入りのプラグイン・エフェクトのご紹介です。 まずここ最近の最大のヒット及び収穫である、SonalksisのEssentials Mk2 バンドルのご紹介です。 http://www.sonalksis.com/index.php?section_id=2 私はメインのドラム音源として、Toontrack社のDrumkit From Hell Superior(DFHS)を使っております。 http://www.crypton.co.jp/mp/do/prod?id=25230 標準で35GBものライブラリーを有し、ドラムをスタジオ録音した際の各マイクのリーケージ(被り音)をも再現可能なソフトウェアで、その昔バンドでドラムを担当していた私としては、正に「待ってました!」的な音源であります。 しかしこのソフトウェアは、スタジオでのドラムの録り音を忠実に再現しようとしてるが故に、ソフトウェアからの出音そのままだと、どうも力不足なことがあります。 私たちが日頃耳にするCDでの生ドラムの音は、ほとんどの場合、EQやコンプなどで処理をされていますから、DFHSからの出音も、同様に処理していった方がしっくりくるのです。 EQやコンプといった基本的なエフェクトのプラグインは、今ではそれこそ膨大な種類が出ておりますが、このDFHSの音に掛けるプラグインでしっくりくるものが、どうも見つかりませんでした。 ただ単に私の力量不足ではあるのでしょうが、私の好みのドラムの音が、80年代的なコンプでバツッと立っている音よりも、もうちょっと70年代的と申しましょうか、よりアナログ録音的なファットな音だということが起因しているようです。 今ではビンテージ系のエフェクトを再現したプラグインも、それこそ膨大な種類があります。 私もその代表格でもあるUAD-1を2枚所有してますし、そこそこ試してきたとは思うのですが、逆にこの手のビンテージ・シミュレーション物だと、ちょっと古すぎるというか、やっぱり今一つしっくりこなかったのです。 それがこのSonalksisのSV-315 Mk2のコンプレッサーはどうでしょう。 このプラグインをインサートし、スレッショルドのつまみをちょっと動かしただけで、私は思わず「おぉ!!」と声を上げてしまいました。 プラグインのコンプにありがちな、バツッと音圧が上がるというのではなく、原音のイメージを全く損なわずに、音が少しずつ太くなり、暖かみを帯びながら前に出て来る感じです。 この言葉だけだと、何だかビンテージ・シミュレーションものと変わらないと思われるかもしれませんが、ちょっと違うのです。 私の頭の中でイメージしていた「アナログ・コンプ」というものの効果を、見事に再現してくれているように思いました。 これは百聞は一聴にしかず、Sonalksisのホームページから30日間制限なしで使えるデモ版をダウンロードできるので、ぜひ試してみてください。 http://www.sonalksis.com/index.php?section_id=14 一緒にバンドルされているEQとアナログ・ゲートも同様に素晴らしいのですが、コンプはとにかく秀逸です。 かく言う私も、実はまだデモ期間の真っ最中なのですが、これはどうも買わざるを得ないなと思っております。 もう一つ、プラグイン・エフェクトでうれしい新製品が出てまいりました。 先月のNAMMショーでも展示されていたようですが、Pro Tools用の非常に高品位なプラグインをリリースしてきたSony Oxford社が、そのラインナップのAudio Unitバージョンの販売を開始したのです。 これはLogicユーザーには正に朗報ですね。 http://www.sonyoxford.co.uk/pub/plugins-sony/News-07FEB2007.htm もともとSony Oxford社の業務用デジタル・コンソールのエフェクトをプラグイン化したこのシリーズは、先ほどのSonalksisの効果とはある意味対照的なエフェクトで、カチッとしたデジタルならではの良さも多いに取り入れた逸品と言えると思います。 今回のAudio Unit化は、まずEQ、Dynamics、Limiterの3つから始まりましたが、このEQは私の大のお気に入りです。 と言うか、もうなくてはならない業界標準のプラグインの一つと言っても過言ではないでしょう。 このEQの効果を言葉にするにはどう表現すればいいのでしょう? 正確?、正直?、どちらも当てはまるとは思いますが、それだけでは足りないようにも思います。 私がこのEQで特に好きなのは、高域を持ち上げたときの効果でして、デジタルEQにありがちなギラギラすることは一切なく、持ち上げたdb分きちんと上がっていることを実感させてくれる、非常に気持ちのいい安心感のある効果です。 プラスマイナスとも20dbも調整できるのですが、安心して大胆なイコライジングに挑戦できます。 そう、「安心」とか「信頼」といった評価が私の中では一番しっくりきますね。 私はDynamicsも所有しているのですが、こちらは正にデジタル・コンソールから抜き出したという感のある非常に高機能なエフェクトでして、GATE、EXPANDER、COMPRESS、LIMITER、SC-EQ、WARMTHといったパラメーターを1つのプラグインの中に有しています。 正直扱いが中々に難しいプラグインと言えますが、最新バージョンではプリセットがいくつか付いたので、EXPANDERなどの今ひとつ使い方が分からない効果も、試しているうちに理解できそうな気がします。 何しろつまみを動かした時に得られる効果が、非常に信頼できます。 ここがしっくりこないプラグインは本当にたくさんありますからね。 こちらも15日間のデモ版をダウンロードできるようです。 私もまだ持っていないLimiterをぜひ試してみたいと思います。 http://www.sonyoxford.co.uk/pub/plugins-sony/support/demos-le.htm 肩の力抜いてお気軽になんて言っておきながら、やっぱり長文になってしまいましたね。 それでは次回をお楽しみに。 #
by uksound
| 2007-02-14 01:48
| プラグイン
2006年 12月 12日
前回の記事では、Intel Macに対応していないEast WestなどのKompakt系プラグインでも、「Kontakt 2」のUniversal Binary版を使えば、Intel Mac上でそのライブラリーを読み込むことが可能なことについて触れました。 今回はEast Westのソフトウェアの中でも最も容量の大きい、「EW/QL Symphonic Orchestra Platinum Edition」をMacBook Proで鳴らしてみるという検証を行ってみます。 この「EWQLSO Platinum」は、"Strings" "Brass" "Woodwinds" "Percussion" というそれぞれバラ売りもされている4つのパッケージをバンドルしたもので、ライブラリーの総容量は約68GBにも及びます。 リリースされた当初は、付属する「Kompakt」のハードディスク・ストリーミング能力が非常に弱く、このソフトを使ってオーケストラを再現するには、4〜8台のコンピューターを使用することが推奨されていたくらいです。 付属の「Kompakt」の能力もマイナー・バージョンアップにより多少は改善されたものの、基本はハードディスク・ストリーミングの能力が大きく改善された「Kontakt 2.1」以降を使うことでやっと本領を発揮できるといった感じです。 「EWQLSO Platinum」の特徴は、付属しているているライブラリーのそれぞれの音色について、3つのマイク・ポジションで収録されているということです。 全て実際にコンサート・ホールで録音され、楽器にオンの状態の音、ステージ前の音、客席後方の音の3ポイントを、ホールの鳴りも含めたステレオの状態で収録しています。 これらの3マイキングのブレンド具合で、鳴らす楽器のホール内での響きもコントロールできるようになっているわけです。 いくら「Kontakt 2.1」以降のハードディスク・ストリーミング性能が上がったとはいえ、この3マイキングをフルに使ったオーケストレーションを1台のコンピューターで行うことは、現状ではまだ不可能です。 しかし各楽器を1つのマイクポジションに限定させれば、1台でフル・オーケストレーションを行うことがかなり現実的になってきました。 (もちろんその曲の構成にもよります。) 今回は「EWQLSO Silver Edition」のメーカー・デモソング、"Be Quick" のMIDIデータを使い、音源部を「Platinum Edition」に差し替えて検証してみました。 管弦打楽器の全てで、28パートを使ったソングになります。 http://www.crypton.co.jp/download/demosong/extra/EWQLSOV_10_Be_Quick.mp3 「EWQLSO」の「Gold Edition」と「Silver Edition」は、そのライブラリーに16bitのサウンドデータが使われています。 これに対して「Platinum Edition」は全て24bit、単純計算で1.5倍の容量になるわけです。 この容量の違いによるストリーミング負荷の違いは非常に大きく、上記のデモ曲 "Be Quick" は、「Silver Edition」「Gold Edition」の16bitライブラリーであれば、それぞれ付属の「Kompakt」を使用して鳴らしたとしても、1台のコンピューターでの再生が可能です。 (もちろんメモリーを多く積んだ高速なコンピューターを使った場合です。) 「Platinum Edition」の24bitライブラリーでも1台のコンピューターでこのソングを鳴らすために、最新版の「Kontakt 2.2」を使っての検証を行いました。 「Kontakt」系ソフトウェアのハードディスク・ストリーミング機能は、「DFD (Direct From Disk)」と名付けられています。 この「DFD」がデフォルトの状態のままだと、このような大容量ライブラリーのストリーミングはとても行えません。 検証に使ったマシンには多めにメモリーを積んでいるので、よりメモリーに溜め込み、ストリーミング負荷を軽減させるよう、「Kontakt 2.2」の「DFD」を以下のような設定にいたしました。 このような設定にしたのは、いろいろ試した結果です。 この「DFD」は、メモリーを多く積んでいるからといってその値をどんどん上げていけばいいというものでもないらしく、ベストな設定の判断が中々に難しいのですが、今回の場合は上記の設定が一番良いように思いました。 NIの国内代理店であるミディアさんのホームページに、この「DFD」についての記述があるのでご参照ください。 http://www.midia.co.jp/support/download/pdf/kontakt2_dfd.pdf まずは、デスクトップ機であるPower Mac G5 2.7GHz Dual(6GB RAM)にて鳴らしてみました。 ホスト・アプリケーションはApple Logic Pro 7.2.3です。 オーディオ・ドライバのバッファ・サイズを512の設定で再生してみたところ、見事に完奏いたしました。 聞いている限りでは、音切れもないようです。 バッファ・サイズを256に変更してみたところ、再生が止まることはないものの、多少音がつっかえたり何度か持続音の音切れが起こったりしました。 概ね再生可能といった感じです。 それでは今回の本題である、MacBook Proを使って、Universal Binary版の「Kontakt 2.2」を使った場合はどうなのでしょう? もしも再生できるようなら、モバイル環境でのオーケストレーションも夢ではないかもしれません。 検証に使った機種は、MacBook Pro 2.33GHz Core 2 Duo (2GB RAM) です。 まずはオーディオ・バッファを512の設定で、FireWire800接続の外付けハードディスクにライブラリーを入れた状態で再生してみました。 再生中、かなりの音切れが起こります。 曲中で、CPUオーバーロードにより止まってしまう時もありました。 そこでひょっとしたらと思い、Power Mac G5の内蔵ハードディスクを、ギガビット・イーサハブ経由のギガビット接続でMacBook Proのデスクトップにマウントさせ、そこにライブラリーを入れた状態で鳴らしてみました。 これでは全くダメでした。 FireWire800接続ハードディスクよりもひどい状態で、何度も音切れが起こる上に、たびたび再生が止まってしまいます。 やはりモバイル環境では無理なのかと思いつつ、もう1つの選択肢を試してみました。 MacBook ProにはExpressCardが使えるため、そこにeSATA接続のハードディスクを接続すれば、理屈的にはシリアルATAネイティブの速度が出るはずです。 (eSATAについては↓こちらをご参照ください。) http://arena.nikkeibp.co.jp/qa/20060123/115115/ この検証のためのeSATA接続用のExpressCardには、Ratoc社のREX-EX30Sを使いました。 http://www.ratocsystems.com/products/subpage/ex30s.html ハードディスクケースには、秋葉原にあるショップの秋葉館オリジナルケースを使っています。 このeSATA接続の状態ですと、何と、Power Mac G5でのオーディオ・バッファが256の状態ぐらいまでは再生してくれました。 多少音がつっかえたり持続音が何度か音切れしたりするものの、再生が止まることはなく、概ね再生可能です。 ハードディスク・ストリーミングのソフトは、何度か再生させると多少こなれてきて再生がスムーズになったりもするのですが、きちんと完奏してくれる時すらありました。 文章だけで書いていると何だか味気ないですが、「EWQLSO Platinum Edition」を28パートも使ったこのソングを、モバイル環境でも再生可能になるとは思っていませんでした。 検証の限りでは、MacBook Proでボトルネックになったのはストリーミングのハードディスクの問題で、CPUのパワーではなさそうです。 実際CPU負荷的には、G5 2.7GHz Dualの方が若干性能が上かなという程度で、2.33GHz Core 2 Duoでも十分なパワーは出ておりました。 MacBook Proでこの性能なら、Quad CPUのMac Proだと、大容量ライブラリーのソフトを扱うにもかなり快適な環境が構築できそうな気がします。 実は今、Core 2 Duoを使ったWindowsデスクトップ機のチェックも同時に行っているのですが、ハードウェア的には似通ったMac/Winをいろいろ検証していくうちに、MacがIntel化された1つの大きな恩恵は(特にDTMの分野では)、ハードディスク・ストリーミング能力の向上であるように思い始めています。 ここら辺の私なりの検証結果は、また今度の機会で。 それでは! #
by uksound
| 2006-12-12 02:20
| ソフトウェア検証
2006年 12月 07日
前回予告させていただいた通り、今回は「NI Kontakt 2」のUniversal Binary版についてのご報告です。 ちょっと前までは大容量ライブラリー用のソフト・サンプラーと言えば「GIGA STUDIO」がその代名詞だったように思うのですが、「GIGA STUDIO」の場合、Windows機をまるまる1台専用機にしなければならず(その利点も多いにあるとは思うのですが)、CPUの高速化とともにプラグイン・インストが全盛になっていく中、徐々に「Kontakt」への関心が高まっていったように思います。 「Kontakt」を今の状況ほど盛り立てるのに最も大きかったのは、East WestやBest Serviceを始めとする主要なサンプリングCDメーカーが、Kontakt系エンジンを採用したソフトウェア・インストゥルメントを次々と発売していったことでしょう。 それまでGIGAライブラリーを数多く開発してきたメーカーがどんどんKontaktエンジンに移行し、中でもEast Westの「Quantum Leap Symphonic Orchestra」(EWQLSO)などは、「Kontakt」の知名を挙げるのに多いに貢献したように思います。 しかしこのIntel Macへの移行時期に来て、多少事情が変わってまいりました。 その原因は、NIが「Kompakt」と「Intakt」の開発を中止し、Intel Macへ対応させないことを発表したことにあります。 Kontakt系エンジンを積んだ3rdパーティーのソフトには、大きくわけて2種のプレイバック・エンジンが存在いたします。 まず1つは「Kompakt」です。 「Kompakt」を採用しているメーカーは、Best Service、East West、Zero-Gなどです。 もう1つは「Kontakt Player」です。 こちらを採用しているメーカーは、Art Vista、Best Service、Big Fish、Garritanなどです。 Best Serviceのみ、両者にまたがっております。 (左が「Kompakt」、右が「Kontakt Player」) NIは、後者の「Kontakt Player」に関してのみ、「Kontakt 2.1」のエンジンを継承しIntel Macにも対応した「Kontakt Player 2」を発表いたしました。 Best Serviceの「Chris Hein Guitar」やFixed Noiseの「OTTO」など、この「Kontakt Player 2」を積んだ製品が、早くも発表されています。 http://www.crypton.co.jp/mp/do/prod?id=28990 http://www.crypton.co.jp/mp/do/prod?id=28900 それでは「Kompakt」を採用しているEast Westなどソフトウェアは、Intel Macに対応するのでしょうか? 「Kompakt」自身のIntel Macへの対応が断たれた現状では、かなり不透明な部分です。 新たに「Kontakt Player 2」へ対応したソフトに変更してくれない限り、Intel Macには対応しないのかもしれません。 しかし、各ソフトウェアの大元である「Kontakt 2」がIntel Macに対応した現状では、回避策が全くない訳でもありません。 Kontakt系のエンジンを積んだソフトウェアの最も大きな特徴は、ソフトウェアのオーサライズ情報が、ライブラリーにも及ぶことです。 Kontaktエンジンのソフトに付属するライブラリーは、「Kontakt 2」でももちろん読み込み可能なのですが、そのライブラリーを積んだソフト側のオーサライズがされていない限り、ライブラリーも使うことはできません。 ライブラリーだけを「Kontakt 2」が入っている別マシンにコピーしたとしても、『オーサライズがされていない』という警告を受け、読み込むことができないのです。 となると、オーサライズさえきちんとできれば、East WestなどのKontakt系ライブラリーを、「Kontakt 2」の入ったIntel Macで使用できるかもしれません。 現状でEast WestのソフトをIntel Macにインストールしたとしても、Rosettaでの動作になるため全く使い物になりません。 Rosettaで動作しているソフトに対するオーサライズ情報を、Universal Binaryに対応した「Kontakt 2」で認識できるのでしょうか? 早速検証です!! 検証のためにEast Westの「Bosendorfer 290」を使用いたしました。 インストールと最新版へのアップデートは問題なく完了いたします。 そして「Bosendorfer 290」のオーサライズに関しては、NIの新しいオーサライズ・エンジンである「NI Service Center」を使用いたしました。 「Bosendorfer 290」自体はIntel Macに対応していませんが、「NI Service Center」でもオーサライズは問題なく行えました。 さあいよいよ「Kontakt 2」を立ち上げ、「Bosendorfer 290」のライブラリーを読み込んでみます。 結果は、、、読み込むことができました!! MacBook Proで検証を行ったのですが、ライブラリーをFireWireの外付けハードディスクに入れた状態で、かなりサスティン・ペダルを使ったりしても、問題なく鳴ってくれています。 これで「EWQLSO」などのライブラリーも、「Kontakt 2」を使うという前提が付きますが、Intel Macでも使うことができそうです。 もともと「Kompakt」はハードディスク・ストリーミングのCPU負荷が大変高いため、Kompakt系のソフトウェアをPower Mac G5などで使用していたとしても、「Kontakt 2」を導入することはかなりのメリットがあります。 Kontaktエンジンを採用した3rdパーティーのソフトウェアから「NI Kontakt 2」へアップできる、「Kontakt 2 クロスグレード版」というパッケージもございますので、現状では各社のIntel Macへの対応を待っているよりも、「Kontakt 2」を導入してしまった方が早いかもしれません。 http://www.midia.co.jp/products/ni/sampling_line/kontakt2/kont2_cross.html では「EWQLSO」などのPower Mac G5でもかなりのCPU負荷だった大容量ライブラリーを、「Kontakt 2」を使ったIntel Macで動かした場合、どれほどのパフォーマンスが出るのでしょう? 私はMacBook Proしか持っていないのでMac Proでの動作検証はできませんが、時間がある時に検証してみたいと思います。 それでは、また! #
by uksound
| 2006-12-07 02:43
| ソフトウェア検証
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